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​ ニュートーキョーシガレット

 プロローグ

 世界の人々は今の生活が嫌になって未来に助けを求めた。偉い人たちは集まってひとつの計画を実行すると決めたのだ。それが「新未来都市化計画」だった。

金をもった人たちは場所とモノを用意した。頭のいい人たちは協力して科学を発展させ未来を作り出そうとした。それは日本という国も例外ではない。首都東京は「ニュートーキョー」と名前を変え生まれ変わった。

町のいたるところで工事が行われ、たくさんの人を退去させ町ごと貸しきった工事も行われた。すべては人のため、いや未来のためにたくさんの金や人が動いた。未来という名の傷跡を残したとある日、悪夢がやってきた。

 正体不明の人型生命体が世界各国を襲う。宇宙人か、はたまたこの計画を妨害するために送り込まれた細菌兵器なのか、定かではないまま「奴」らはをありとあらゆる生物を喰い殺し始めた。

「奴」らは全長2メートルほどの黒と灰色の肌で、二足で立つが人の姿とはかけ離れている。走るために特化した脚部は常に関節が折れ曲がっており、どの個体を見ても筋肉の付き方は異常なまで膨れ上がっている。腕は立ち上がった状態でも地面に手が付くほど長い。上腕部の膨れ上がるほどの筋肉、関節から前腕にかけて太く長い腕は叩きつければ岩をも砕く頑丈さだ。その身なりから攻撃手段は大振りで隙が多いように見えるがそんなことは一切ない。腕の動きは空気の抵抗を感じさせないほど高速で、人は自分の上半身が吹き飛ばされたことが気づかずに絶命する。頭部は額から後頭部にかけて長く楕円型に膨れ上がっており、膨れ上がった部分は硬く昆虫のような外骨格で形成されている。その膨らみがあまりに大きいので額と目が同化しており鼻がなく、すぐ下には顎とつながっている。獣のような牙が生え、その顎は骨をいとも簡単に砕いてしまう。解剖の結果、頭部の膨らんだ外骨格の中身はすべて脳であることが判明した。知識生命体であることも発覚し戦闘や生殖を重ねることで成長していくことが判明する。

 

生物を破壊していくその姿から各国政府でこの人型生命体は「SI-VA(シーヴァ)」と命名された。シーヴァへの対抗として軍隊を持たない日本でも政府軍を結成する。その間もなくにシーヴァは個ではなく群として生息し始める。組織化しはじめた原因としては奴らの成長力によるものでその群を率いる特異種「シーヴァコア」と呼ばれる個体によるものにより奴らは通常種のシーヴァに対し特殊な電波を送ることで操ることができる。見た目は小さく大体1メートル以下の個体がほとんどで人型ではなく卵のような黒い塊が地面に強く付着している状態で発見される。通常種とは異なり直接的な攻撃手段はないがシーヴァコア付近に近づくことにより強い通信妨害を受け通信機器による通信は一切使うことができなくなってしまう。これらが現在シーヴァに対して判明している情報である。

 

 「新未来都市化計画」。人々は未来に託すよりも先に、今のシーヴァへの対策へと目を向けるようになった。それらの情報を集めたのは政府軍の中でも精鋭中の精鋭である「特殊任務専攻部隊」だ。

この部隊は通常種とは異なるシーヴァ発生時、一番槍を入れる役目を持つ。任務の際、個体情報の収集とその殲滅方法を検討・実行しなければならない。その為死亡率も高く3回の任務で生き残れば優秀とまで言われている。

その中でも日本政府軍の部隊は世界各国からも一目置かれる存在であった。日本はシーヴァの進化の過程が特殊であり、他の国と比べて早いのだ。その為他国と比べると部隊の消耗率が高く隊員の入れ替わりも激しい中、設立当初から生存し続ける一人の男が日本にいる。「カミノギ」と呼ばれる男はたくさんの人間を救った英雄だ。体術、射撃においてのエキスパート。どのようなものであっても武器として使いこなす天才。その中でも彼は「日本刀」をこよなく愛用している。日本刀を使いこなし先陣を切るその姿は、現代を終わらせ未来を切り開く「現代最後の侍(ラストサムライ)」と人はそう呼ぶ。カミノギの方針で日本の特殊任務専攻部隊の制服は黒い背広を着用しており、黒い柄のないネクタイを締めているところから周りからは喪服だと恐れられいるが親しみを込めて「黒服」と呼ぶ者もいる。

 

 日本のヒーローでもある黒服を技術力でサポートする科学者がいる。「アヤセユウト」はアインシュタインの再来とまで呼ばれた天才科学者だ。シーヴァの進化に置いていかれぬように政府軍の技術力を進化させている第一人者である。黒服たちが持ち帰ったシーヴァの個体やデータを利用しシーヴァに対し有効的である武器、兵器の開発を行っている。

まず彼の驚くべきところは成人ではないところだ。6歳のときに彼は3つ年上の姉と一緒に政府軍に保護された。あまりにひどい惨状だったとそのとき保護した政府軍関係者は語る。

町からかなり離れた森林地帯の集落でおよそ200人ほどの人が住んでいただろう、政府軍が確認できたシーヴァはたったの3体。生存者はこのアヤセ姉弟だけだったという。政府軍の保護区からもかけ離れて、この集落に人が住んでいるとの情報すらこの事件が起こるまでわからなかったという。姉弟はシーヴァが発生してからおよそ一ヶ月間、政府軍が保護するまで集落で隠れていたという。ただこの姉弟には1ヶ月間生き残ることができる秘密があった。

まず弟の「アヤセユウト」には天才的な頭脳とその場の問題に関して一瞬で解決することのできる判断力があった。そして姉の「アヤセ■■」には「銃を握る才能」があった。姉弟それぞれの能力の高さから政府軍に保護され5年後、「アヤセユウト」は子供ながら技術開発部門に配属され、姉である「アヤセ■■」は世界最年少である14歳で「日本政府軍特殊任務専攻部隊」に配属された。

 

 このアヤセ姉弟が配属されてから、また5年の月日が流れる。「新未来都市化計画」の計画中止はいまだ世界に発信されていない。この計画を知るものは徐々に世界から消え、詳細すらも曖昧に、そして記憶の片隅へと消え始めている。結局、人は今を生きなくてはならないのだ。生き残らなくてはならないのだ。シーヴァの進化は続き人口は減る一方で、人々は未来を忘れていった。

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